W杯に出場する32か国のカンタンな歴史と、チーム戦術や注目選手等を紹介していく/24位 デンマーク🇩🇰
24位/デンマーク代表(ダニッシュダイナマイト Danish Dynamite、デンマーク爆弾)
FIFAランク19位、2大会ぶり5回目、W杯最高成績ベスト8(98年)
北欧の、スカンディナビア半島(スウェーデン)の南に浮かぶ島々と、ドイツの北のユトランド半島にまたがってある国。9世紀にノルマン人の一派であるデーン人が建国した。
10世紀には神聖ローマ帝国にひざまずいたが、11世紀になるとクヌート王がイングランドを征服、アングロサクソン人を服従させてイングランド王を兼任し、イギリス、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンを領土とする北海帝国を築き上げた。
15世紀には王女マルグレーテがデンマーク・ノルウェー・スウェーデンの北欧3国の王位をすべて兼任するというカルマル同盟を結成し、グリーンランドを領有するなど北海・バルト海を支配する盟主として君臨し、ドイツ都市国家の商業軍事同盟であるハンザ同盟と商圏をかけて争った。
17世紀には首都コペンハーゲンを新設した国王クリスチャン4世が、ドイツで起こっていた30年戦争に介入するため派兵するも、神聖ローマ帝国が雇った傭兵隊長ヴァレンシュタインの獰猛な反撃に怯えて撤退。一方隣国のスウェーデン国王グスタフ=アドルフはその戦争で大きな成果を上げるなど、「北欧の盟主」たる立ち位置を大きく揺るがせることとなった。
近代では、ナポレオン戦争(1803〜1815)でナポレオン=フランス側に付いて戦線に参入するも、スウェーデン軍に敗北。領土にしていたノルウェーを失い、国土縮小。さらにはその弱ったところに、元よりドイツ系住民が多かったシュレスヴィヒ・ホルシュタイン地方でドイツへの併合を求める反乱が発生。
隣国のプロイセン王国(ドイツ系)の宰相ビスマルクはこれを見てオーストリア帝国(ドイツ系)を誘って素早く侵攻、デンマーク戦争(1864)を起こす。デンマークは領土を縮小させ、「北欧の大国」たる立ち位置からの凋落が決定的となる。
その後は小国主義へと転換。「外で失ったところを内で取り戻そう」を合言葉に、国内の未開拓地の開拓運動を開始し、成功。酪農を主体とした農業大国へと変貌を遂げ、現在に至る。
* * *
デンマークのサッカーは理路整然と統率された組織力が伝統だ。北欧の代表チーム全体に共通する特徴だが、冬の厳しい寒さの中を生きる彼らには、北欧家具のようなきっちりした設計、外気が入らないようにぴしゃりと閉まるドアや窓のような緻密さが必要なのかも知れない。
ユーロ2016の出場権をスウェーデンに敗れて逃したことでオルセン監督の16年に渡る長期政権が終了。彼が率いるデンマーク代表とは2010年W杯で日本も激突し、勝利した。
後任についたのはノルウェー人のハレイデ監督。アシスタントコーチにはミランで活躍した代表OBのトマソンが就任し、新体制がスタート。
ハレイデ監督の方向性はシンプルだった。エリクセンの重点活用だ。プレミアリーグで首位を争うトッテナムで、大黒柱として攻撃の組み立てを任されているMFエリクセンに攻撃の指揮権を全任し、周囲の選手は彼の手足となって各個任務を遂行するという“エリクセン=デンマーク”を築き上げ、統率されたチームの組織力とエリクセンの「個」が融合してうまく機能。
エリクセンはハレイデ監督体制以降の18試合で15得点を上げる獅子奮迅の活躍を見せる。特に大一番、プレーオフのアイルランドとの第2戦でエリクセンのハットトリックでチームは大勝。W杯への切符を手にした。
エリクセンと、その王様システムに不平を唱えることなくチームのためにせっせと働く逸材たちーーRBライプツィヒでヴェルナー(ドイツ代表CF)とツートップを組んでいるFWポウルセン、フェイエノールトでエースとして君臨する9番ヨルゲンセンの前線。
中盤に安定をもたらすデラニーとクビストのWボランチ。ケアー(セビージャ)とクリステンセン(チェルシー)にレスターGKシュマイケルを加えた盤石の最終ライン。
アヤックスで覚醒したワールドクラス、19歳ドルベリが代表においてもセンターフォワードとして定着すれば、ヨーロッパの大国にも引けを取らない戦力を揃えることになるデンマーク代表。国民の掛ける期待は大きい。
◾︎基本フォーメーション4-2-1-3
◾︎注目選手
▼クリスティアン・エリクセン/Eriksen
所属:トッテナム・ホットスパー(英)
MF 攻撃的ミッドフィルダー、トップ下
デンマークの神童。プレミアリーグで首位争いを繰り広げるトッテナム・ホットスパーの全攻撃を指揮している。
プレースタイルは「足の速いスナイデル」という感じで、常にチームの“預けどころ”になるようなポジショニングを意識しつつ、自らの動きで相手選手を引きつける囮役をこなし、味方へのスペースメイクをも行う。
常に動き回るタイプの亜流の10番選手であるため、DFがマンマークをしにくく、「潰す」ことが難しい司令塔。
代表では得点力を開花させ、18試合15得点。パスサッカー帝国の復権を目指すバルセロナがしきりに獲得を狙っている。
エリクセンのプレー
▼ユスフ・ポウルセン/Poulsen
所属:RBライプツィヒ(独)
FW センターフォワード、ウイング
"デンマークの怪物"と呼称される巨人ウイング。ドイツ・ブンデスリーガでバイエルンと首位争いを繰り広げるRBライプツィヒでツートップの一角を務めている。
身体能力全般が優れており、当たり負けしない体の強さは勿論だが、地面をグンと蹴る脚力があるためトップスピードの速さ、アジリティの高さが破壊的。
ボールコントロールの技術もウイングとしては標準的にあり、190越えの巨体が快速ドリブルでゴール前へ突進する姿は迫力満点。
▼カスパー・ドルベリ/Dolberg
ドンペリではない。オランダの名門アヤックスのエースとしてチームを牽引し、29試合16ゴールと得点を量産する天才センターフォワード。まだ19歳だが、次世代のワールドクラスとして欧州列強クラブからの引きがすでに強まっている。
187センチのフィジカルを生かしたポストプレーが得意で、前線で身体を張ってボールの収まりどころとして機能する。縦への推進力のあるドリブルも持ち合わせており、倒されてもボールをキープしたまま立ち上がり、進む。
パワーのあるシュートもハンパなく、そのキック力は規格外。一瞬でもゴール前を開けてしまえば強烈なミドルがぶち込まれる。
ポーカーフェイスでゴールを決めても悠々と、マスクのように表情の変わらない様はとんでもない才能を感じさせる。
ドルベリのプレー
https://youtu.be/8HryTGUoG6M