バルサ編/海外サッカー入門向けに強豪クラブベスト20チームの戦術と有名選手を紹介してみる Part.3
3位/FCバルセロナ(Futbol Club Barcelona)
所属リーグ:リーガエスパニョーラ
本拠地:スペイン・カタルーニャ州バルセロナ 監督:バルベルデ
FCバルセロナのユニフォームの首には、
「クラブ以上の存在(MÉS QUE UN CLUB)」と書いてある。
そう、このクラブはカタルーニャ国民にとってのアイデンティティ、スペイン中央政府の支配(VSレアルマドリード)に対抗するという使命とメタファーを帯びたサッカークラブなのだ。
「カタルーニャ国民のクラブ」らしく、その運営は会員制だ。全世界で20万人にもおよぶクラブ会員から会費を集め、その資金をクラブ運営に使っている。
これまで国内リーグで24回優勝を成し遂げており、通算5回CL優勝を果たして欧州の頂点に立っている。
フロントもファンも「スペクタルクルな魅せるサッカー」を標榜しており、パスを繋いで相手を崩す、"美しいサッカー"のようなサッカー言説はすべてこのクラブが採る戦術を拠り所としている。
その始まりはクラブのレジェンド、クライフが掲げた「トータルフットボール」にある。全員攻撃・全員守備を掲げて「ポジション」という概念を取り払い、「スペース」を重要視する。
役割分担ではなくDFだろうと攻撃の組み立てに参加する、FWだろうと守備に協力する。ポジションに縛られるのではなく、全選手が流動的に自分のいるスペースに応じた動きをする。
その後ファン・ハールやライカールトなどによりポゼッションサッカーが確立され、グアルディオラにより、かの有名な「ティキ・タカ」戦術が完成する。
ワンタッチでリズミカルに次々とボールを回すパスサッカー。
サッカー経験者なら誰もが練習でやったことのある「鳥かご」を極限まで磨き上げ、試合でのパス回しに導入する。
カウンターサッカーとは違い、縦ではなく主に横方向にボールを回していく。中盤~最終ラインを広く使い、選手たちはポジションを入れ替えながら短いパスをリズミカルに繰り返す。
そうして相手の視点(注目)を目まぐるしく動かし、徐々に崩れてくる相手の守備陣形の間に「スペース」を見つけて縦パスを出し、チェスのように理論的に攻め込んでいく。
他にもグアルディオラの戦術には、クライフからのスタイルである前線からの激しいプレスがある。
「5秒ルール」と呼ばれる守備で、相手にボールを奪われたらどんな時もかならず5秒間は全員で囲んで奪い返しにいく。 5秒を過ぎれば、さっと諦めて下がり、守備陣形をしっかりと整える。
なんにせよ、バルサのスタイルはポゼッション。ボールを適当に蹴るな。GKから最後のFWのシュートまで、完璧に自分たちがボールの動きを支配する。
無理なパスを出して相手にボールを奪われるくらいなら、一旦後ろに下げる。相手にボールをもたせない。
「鳥かご」が完璧にこなせれば試合でもそれが可能だ、という理論だ。
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しかし、後任のエンリケが率いたMSN(メッシ・スアレス・ネイマール)時代のバルサは、前線に「世界最強の矛」を手に入れたことで、中盤と最終ラインの横を幅広く使ったパス回しの意識よりも、縦へ縦へと仕掛ける攻撃を好み始める。
とりあえず、前3人にボールを渡しておけば決めてくれるので、中盤のパス回しの質が下がっていたことは否めない。
しかし今季、ネイマールがパリに引き抜かれるという大事件が発生。
今年就任したバルベルデ監督は、クライフ-グアルディオラ
のポゼッションサッカーを本格的に取り戻すことを宣言。
さらには、それに「メッシ王様システム」をゴリゴリに推していくことも決めた。
伝統の4-3-3システムを放棄し、フォーメーションを4-3-1-2へ。
左のトップにCFのスアレス、右のトップにはウイングタイプのデンベレやデウロフェウを配置。メッシはスアレスの半歩後ろのゴール正面に配置された。
バルサの中盤はパスサッカーを取り戻す。ティキタカのアイデンティティは、
まだバルサの選手から消えてはいなかった。メッシもそれに加わりつつ、ペナルティエリアへの突撃役を一手に担う。
これが功を奏し、バルセロナはメッシを中心に得点力が爆発。
「メッシシステム」のバルサは現在
リーガエスパニョーラで首位を独走している。
■2016-17シーズン
■今シーズンの基本フォーメーション4-3-1-2
◆リオネル・メッシ/アルゼンチン代表
CF センターフォワード、トップ下、ウイング
人間の姿をした神。
身長169㎝、体重67㎏とその身体は日本人標準体型とたいして変わりがない。
だが彼こそがサッカー史上最もサッカーの上手いプレイヤー。もう完全に全盛期のマラドーナを超えている。
フォワードの基礎技術であるドリブル、パス、シュート。すべてMAX能力値。だがその中でも特筆すべきは絶対的なドリブル力。 密集地帯でのドリブルの加速力が異次元。
もちろん、世界の超一流のドリブラーなら、邪魔する相手がおらずスペースが広く空いたようなエリアであればメッシよりも速くドリブルを出来る選手はいる。クリスティアーノロナウドもその一人。
だがメッシは相手選手ががっちり守備を固めてきてスペースのない密集エリアにおいてもトップスピードでドリブルを行うことができる。
インステップ、インサイド、アウトサイドで行う普通のドリブルに、つま先のトーキックを織り交ぜて行われるメッシ流ドリブルは世界でも彼しか行えない。
ドリブル中、足から殆ど離れないボール。
信じられないスピードとクイックネスでペナルティエリアに向けて侵入する様はDFが何人張り付いても止められない。
そうやって相手DFを引きつけておいてとどめはネイマールやスアレスへの正確なパス。アシストを量産している。
◆ルイス・スアレス/ウルグアイ代表
CF センターフォワード
ときには相手DFへの噛みつきも厭わない、ウルグアイ産の猛獣。
点を取ることへの嗅覚が世界一。ボールが目の前に転がった瞬間、飛びつき、打てる!と感じた瞬間にはもう打っている、天性の点取り屋。
シュートレンジはめちゃくちゃ広く、どの角度から、どんなシュートが放たれるのか、誰にも全く予想出来ない。
噛み付いてしまうのはあくまで本能。決して馬鹿ではなくサッカーIQはめちゃくちゃ高い。
センターフォワードとしてのスペースメイク、ビルドアップ、チェイシング。全て高いレベルでこなせる。
チームの歯車として、効率よく効果的にプレーが出来る選手。
個人でドリブルなどで打開する技術もトップレベルではあるが、組織の一員として攻撃を回すことができる能力がある。
バルサ加入3年で合計119ゴールを上げる怪物だ。
◆アンドレス・イニエスタ/スペイン代表
MF インサイドハーフ、トップ下
現代サッカー界において、間違いなく最もテクニックのある選手のひとり。
170センチ65キロの禿げたおっさん(33) が繰り出す華麗なプレーは驚愕の一言。
バルサの中盤を作る役割を請け負い、チーム全体のパス回しを円滑にする。「ココにパス出せばいい形が作れるな」という陣形崩しの形をフィールド上にいながら まるでテレビ中継で上からサッカーを見てるかのように俯瞰して見ることができ、その通りにチームを動かしていく。
パスセンスは史上最強レベルだ。
それに加えて抜群のボールキープ力を兼ね備える。ボールコントロール能力が高いのでボールを取られない。そこから、どんな狭い場所、相手に囲まれたとしても、滑り込むようにスキマを抜き去る事が出来るドリブルテクニックがある。
イニエスタは相手のアクションをひたすら待ち、出方を伺う。
相手の一瞬の重心の揺らぎを見逃さず、翻弄するようにかわして行く。
試合の状況を素早く察知するサッカーIQの高さがあり、それを信頼して、周囲の選手は彼のコマとなって動く。優れた判断力によって最も適切なプレーを一瞬一瞬で判断し、みずから実行し、チームに実行させる天才。