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W杯に出場する32か国のカンタンな歴史と、チーム戦術や注目選手等を紹介していく/23位 アイスランド🇮🇸

23位/アイスランド代表🇮🇸(Strákarnir Okkar 英:Our Boys)
FIFAランク21位、W杯初出場
監督:ヘイミル・ハルグリムソン

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北大西洋に浮かぶ人口30万人の島国で、2014年公開の映画「LIFE!」で舞台となったことでも有名。火山、巨大氷河、温泉、溶岩原を擁する大自然に溢れた国で、ほとんどの国民が住む首都レイキャビクの電力は地熱発電によってまかなわれている。

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この地にはじめに上陸したのはアイルランド🇮🇪から来た修道士たちだと伝説には残されているが、本格的な入植は9世紀にノルウェー🇳🇴からやってきたノルマン人バイキングたちによるものだった。

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彼らはノルウェーの元豪族たちで、ノルウェー国王の圧政から逃れて船乗りとなって海を彷徨い、島々を襲撃して生計をたてていた。バイキングたちは国王軍の追撃をかわして海を北上し、極北の海に大きな孤島を見つけて上陸した。
首都のレイキャヴィク「煙の立つ入江」という意味で、温泉の湯けむりが立ち上るこの地に彼らは最初の街を建設しようと決めたのだった。♨️

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930年には「アルシング」と呼ばれるヴァイキング集会が成立。それは政治を取り決める議会として機能し、以後アイスランドは国王が存在しないヴァイキング共和制が根付いた。

しかし北欧情勢の変化により1262年よりノルウェー🇳🇴、1380年よりデンマーク🇩🇰の支配をそれぞれ受けることとなる。アルシングは形骸化し、やがて消滅した。長期のデンマークの支配により、アイスランドはヨーロッパ最貧国の地位へと落ちてしまう。

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19世紀後半になると大陸の民族主義が波及し、アイスランド島にもナショナリズムが生まれる。国民はアルシングの再開デンマークに要求し、議会による立法権を回復させる。その後イギリスよりトロール(底引き網漁ができる船)を輸入することでタラ漁を一大産業にまで発展させる。アイスランドはヨーロッパ中にタラを輸出して国家生計を立て直した。

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20世紀半ば、WW2が起こりナチスドイツがデンマークを征服すると、英米が反撃の拠点としてアイスランドに上陸デンマーク本土と分断されたことで独立機運が高まり、44年に国民投票独立を決定アメリカは北極海を挟んでソ連と対峙するアイスランド島を戦略的に重要視し、NATOに加盟させ、アメリカ軍基地を島内に設置した。

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1958年〜1976年にかけてイギリス🇬🇧との間にタラ戦争が発生した。

アイスランドは国家の生命線である水産資源を守るために自国の排他水域* を独断で決定し、宣言。それを徐々に拡大(12海里→50海里→200海里)させ、「この領域内の外国船はすべて排除する」とアナウンスしたことに端を発する戦争だった。

*沿岸から200海里を国家の経済主権の及ぶ範囲とする「排他的経済水域(EEZ)」が世界的に採択されたのは1982年で、それまでは公海自由の原則が適用されていた

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追い出されたイギリスは「タラが獲れないとフィッシュ&チップスが食べられなくなる!」とマジギレ。アイスランド沿岸にまで軍艦を派遣し、漁船に向けて砲撃。アイスランドは軍を持たないものの沿岸警備隊を出動させてそれに応戦。
小競り合いが幾度も続いたが、アイスランド政府がNATO脱退すんぞ!!」と仄めかすと、こんなヤバイところにソ連の基地を置かれては困るとアメリカが即座に仲裁に入り、事態はアイスランドの権利を認める形で収束した。

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EURO2016でイングランドを倒すなど大旋風を巻き起こしたアイスランド代表。勝利を祝うバイキング・クラップは世間でも話題となった。

国内にプロリーグはないが、33万人の国家人口のうちサッカー人口3万3000人、アマチュア含む成人男子のサッカー協会登録者3000人、プロ100人(この中から代表スタメン11人を選んでるのだから凄い、)とサッカーに対する熱意はヨーロッパ随一だ。

 

その戦術は、あのレスターを彷彿とさせる4-4-2ブロックの徹底。攻め込む際にはエヴァートン所属のシグルドソンが3人の前線選手を従えて指揮権を取る4-2-3-1だが、ボールをロストした途端にフォーメーションは4-4-2へと素早く変化する。

 

ゲームの大半において、足元の技術やパス技術に勝る相手チームにボールを持たれることを想定(諦念)しており、チームは守備局面における4-4-2をベースの状態として鍛錬されている。

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全員がハードワークをし、個々の選手のクオリティでは負けても運動量と組織力で総合的に相手を凌駕する。

通常4-4-2は、4+4の後方8人でガッチリと守備を固めるフォーメーションだが、アイスランドの場合はレスターと同じくFW味方のMFラインに近づいて連係して守り、合計10人の守備ブロックを敷く。

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ブロックをなんとか崩そうとする相手のテクニカルなボール循環に対して90分間我慢を続け、ガッチリとしたゾーン・ディフェンスで対応。選手同士で正確にマークを受け渡しながら執拗に守り続ける。ボールを奪うと高さのあるパスを出して、空中戦に競り勝って前進していく。


ゴールに近づいたらMFシグルズソンのセットプレーや、代名詞にもなっているロングスローを使ってワンチャンを狙う。
ハンドスプリングスロー(日本戦でも披露された助走をつけたでんぐり返りスローイン)の名手、ソルステイソンはいなくなってしまったが、それでも長いスローインをゴール前に放り込む戦術はチームの肝になっており、EUROでもそこから幾度となくチャンスを作り出した。

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EURO2016でアイスランドと対戦したポルトガル代表、C.ロナウドの言葉を引用しよう。

 

アイスランドは何もしていない。守って、守って、守って……それだけだ。彼らは90分間で2つのチャンスを作って、うち1つゴール決めた。向こうにとってはラッキーな試合だったよ」
「みんなストレスを溜めている。相手はサッカーをやろうとはしなかった。きっとこれからも何もしないだろう。はっきり言って器が小さいよ」

 

しかし、何もしていないわけではない。全員が走り切り、全員が球際で激しく戦っている。ウンザリするような守備によって相手の神経を削りながら、集中が切れた一瞬の隙をついて逆襲の時を今か今かと狙っているのだ。

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◼︎基本フォーメーション4-2-3-1

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◼︎注目選手

ギルフィ・シグルズソンSigurdsson

所属:エヴァートン🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿

MF トップ下 センターハーフ

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プレミア有数のセットプレー職人。アイスランドがW杯初出場を決めたコソボ戦🇽🇰で、1ゴール1アシストと大活躍した。

昨季のスウォンジーでは大車輪の活躍を見せ、フリーキックコーナーキック・PKの全てを任され、カーブをかけたり、無回転で落としたりと美しい軌道を描く高水準のセットプレーを魅せてチャンスを演出し続けた。今季およそ64億円でエヴァートンに移籍。加入直後にカマした45メートルのミドル弾は話題となった。

186センチの大型トップ下として、フィジカルを使ったポストプレーも上手く、巧みに選手と選手の間のスペースに入り込んで基準点としての役割を果たす。
運動量も豊富で、守備にもよく動く、アイスランドの攻撃と堅守に共に貢献するイイMF。

 

シグルズソンのプレー

https://youtu.be/oxCX8O7n8Ts

 

 

▼アーロン・グンナルソン/Gunnarsson
所属:カーディフ・シティ🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿
MF 守備的ミッドフィルダー

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バイキング顔のキャプテンとしてチームを牽引する、アイスランドの不屈の魂の象徴。プレー技術はそこそこだが、闘志みなぎるハードなプレスと運動量で、チームの頑丈な守備を支える。また、チャンスには前線に顔を出して得点機会を伺う。

クソ長い助走から豪快な手の振りでゴール前にボールを放り込むロングスローインを武器にしている。

 

W杯出場をファンと共に祝うバイキングサンダークラップ

https://youtu.be/uJ_fh_Ks9QY