ドルトムント編/海外サッカー入門向けに強豪クラブ20チームの戦術と有名選手を紹介してみる Part.10
10位/ボルシア・ドルトムント(Ballspielverein Borussia 09 e.V. Dortmund)
所属: ブンデスリーガ 本拠地: ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州ドルトムント 監督: ピーター・ボス
香川真司が所属するドイツの強豪。略称はBVB(ベーファウベー)。
2010-11、2011-12シーズンの2年連続ブンデスリーガ優勝、2012-13シーズンのCL準優勝(優勝はバイエルン)など、偉大なる成績を残したクロップ無き後、15-16シーズンよりトゥヘル監督が指揮をとった二年間。
リーグ優勝こそ無かったものの、CLベスト8に2年連続で入り、DFBポカール(リーグカップ)でバイエルンを破り優勝を果たした。
トゥヘル体制一年目はオーバメヤン、ムヒタリヤン、ロイス、香川の4人で構成される「ファンタスチィック4」の大活躍で幕を切った。しかし2年目はムヒタリアン、ギュンドアンが移籍し、デンベレ、ゲレイロ、ゲッツェ、シュールレらが続々加入。新戦力を加え、「個」優先で行くのかチーム優先で行くのか少しまとめきれずに終わってしまった印象だ。
ドルトムントの戦術は何と言ってもクロップが残したゲーゲンプレス。今季から就任しているペテル・ボス新監督は「さらなるハイプレスの徹底」を戦術テーマに掲げており、この方針をさらに強化しようと試みている。
その戦術としては、自チームは多少無理をしてでも相手陣地に突撃する。そして無理がたたり相手にボールを奪われた瞬間、相手チームに全体で一斉にプレスを掛ける。
相手陣地やゴール前で相手からボールを再び奪い返し、相手のディフェンスラインが崩れて焦ったところをチャンスとし、一撃を突き刺す。
一次攻撃が刺さらなければ、セカンドボールを高確率で回収し、二次攻撃、三次攻撃を仕掛ける。ひとたびクロスが上がれば、かならず3〜4人がペナルティエリアに走りこむ。それが出来るように世界でも選りすぐりに足の速い奴らを前線に揃えてある。
ゲーゲンプレスは「奪われる」前提の攻撃戦術であり、「ミスをしない」ことを第一にしているチームとはそのメンタリティが違う。突っ込めるところはどんどん突っ込む、この積極性が観るものを楽しませるスペクタクルなサッカーを生み出した。
全員で前を向き、全員でハードワークを行い、全員で走りきり、全員でゴールを目指す。トゥヘル体制となり相手に対応して細かく戦術をいじり過ぎたフシもあるが、チームに流れる戦術の基本スピリットはこれである。
■2016-17シーズン
https://youtu.be/yOOHm13Gr28
■今季の基本フォーメーション4-2-3-1
<有名選手>
◆ピエール=エメリク・オーバメヤン/ガボン代表
FW センターフォワード
ただでさえ顔がピーナッツ型で細長いのに、ヘアスタイルも顔が縦に強調される系のヤツにして、空気抵抗を減らし、スピードを上げる。それほどまでに徹底して「速さ」にこだわり続けるワールドクラスのスピードスターだ。
ドルトムントの速い攻撃を象徴するような韋駄天FWで、そのスピードは世界No.1。30m走で「3.7秒」を記録し、これはボルトが世界記録を出したレースでの30メートル地点通過タイムよりも速い。
トップ陸上選手並みのスピードでDFを置き去りにして裏に飛び出す。圧倒的なスピードで抜け出してからのGKをあざ笑うかのようなループシュート。
また身長が187センチとフィジカルにも優れており、センターフォワードとしてのポストプレーも出来、ゴール前での競り合いにも強い。
全てを兼ね備えたブンデスリーガ得点王。その得点数は、あのレヴァンドフスキをさえ凌駕する驚愕のシーズン31得点だ。
◆アンドリー・ヤルモレンコ/ウクライナ代表
今季新加入だが、早速フィットし、デンベレが抜けたドルトムントの右サイドをしっかりと埋め合わせている。今季第5節のハンブルガー戦では香川との相性抜群のコンビネーションプレーを炸裂させた。
ドルの歴代ウイングのようなスピード系ではないが、フィジカルが強くボールキープができるので、前線におけるボールの収まりどころになれる。
クロス精度、パス精度、フィジカル、サッカー脳はデンベレより高いので、ただ前に突っ走るだけでないドルトムントの新たな攻撃の形を予感させる存在となっている。
最大の長所は、その一瞬のスピード、瞬発力。100メートル11秒というスピードを、 試合中幾度と無く要所で発揮出来る爆発力が最大の武器。
常に相手DFの裏を狙い、ピッチ上を動きまわり機を伺う。
近距離でも、遠距離でも正確にゴールを狙う。精度も非常に高く、少しでもマークを離せば、躊躇なく正確なシュートを打ってくる。
左右を限定せずにプレー出来るユーティリティ性を持つ。攻撃的ポジションなら前線から中盤まで幅広くこなせる。
スペ(故障しまくり)なのが難点だが、ガラスのエースは試合に出れば眩いばかりの輝きを放つ。