恋とロマンスを「デザイン」しよう:すべての男に送る、女の子の正しい口説き方/Darwin's Principia:Discourse on the Mating Method 1
男と女が不思議な力で惹かれあう現象:恋とロマンスを、人工的に設計 (デザイン) することは可能だろうか?
──イエス。
少なくとも、そういう前提でこれから話をしていきたい。
(ここでいう “デザイン” とは、あるものや現象の形態を人工的に設計し、また人工的に生みだし、人工的にカタチを整え、機能させるという意味)
21世紀現在、“ヒトが恋に落ちるメカニズム” については、おもに神経科学の分野からかなり解明されている。
あとはバイオメカニクス的解剖医学の進展と、すべての土台となる進化生物学との連結、またプラクティカルな認知&進化心理学研究の報告を待つ──といった状況だ。
それにしても、
“恋とロマンスを「デザイン」する”
これほど、戦略的な男にとって魅惑的な(そして詩的な女にとっては興ざめな)研究は世界でも他に類を見ないだろう。
美やロマンティックやエロスを、男女間に生じる不思議なsense of wonderを、あのエモーショナルで止めようがない炎を、無機質で冷たい生物学的機構:ヒト=配偶アルゴリズムのロジックのもとに解明、説明*してしまおうというのだから。*コトバにできないもの、じゃなかったのか?!
天動説を否定したコペルニクスや、創造論を否定したダーウィンにも間違いなく匹敵するほどの、何たる傲慢、何たる不躾、何たる蛮業。神様に対し罰当たりもいいところだ。
───そういう訳で、これから俺たちが踏み入れるのは現代社会においてもある種の「タブー」とされる領域になる。
いわゆる"恋愛メソッド"についての批判は掃いて捨てるほどある(一応、巷の怪しいメソッドとは一線を画するものをここでは書くつもりだが)し、このような取り組みについては生理的嫌悪感さえ抱く人もいる。
古来から “この世の最大の謎(ワンダー)” として挙げられてきたものが「恋」なのだ。そこに一体全体、どんな理由があって、所詮は下心まみれのクソ男たちがズカズカ立入ってイイことになるだろう?
───言いたいのはとにかく、"恋愛を設計"するのは、人様のアレな琴線に触れる行為だってことだ。恋愛のメカニズムを解き明かすことは、率直に言って、世間サマの気持ちを害する。
平安時代には、場に「興醒め」をもたらす者はその場から排された。同様に、このメカニズムをキミが「ひけらかす」ことは社会にとって好ましくないし、コミュニティからの「排除」の厄をキミにもたらしうる。
この類の研究が、世間サマに対して非常に “挑戦的” な試みであることに留意してほしい。ここに DANGER:取扱注意 の警めを立てておく(カッケェ!)。
“ 1st RULE: You do not talk about FIGHT CLUB. ”
<第1章>
口説きはスポーツだ
──勝利条件はあの子を“ドキドキさせる”こと
「恋を設計 (デザイン) する」と聞いて、まず世の中の男がアタマに思い浮かべるのは「○○すればオンナは落ちる!」的なマニュアルもしくはテンプレートだろう。
──はじめに断っておこう、そんなものは無いし、あったとしても有効ではないのでここには書かない。
ここに書くのはあくまで「人と人の間に“ 恋 ”というフィーリングが生じる仕組み」であり、それは飛行機はなぜ飛ぶのか?みたいな話だ。
「飛行機はなぜ飛ぶのか」を知ることはテンプレか?マニュアルか?──違う。飛行機を飛ばすのはお前だ。
──だから、あの子を口説き落とす「テンプレ」や「攻略法」があるってこと???😋 とものごとを単純に考えないでほしい。設計図さえあれば組み立てられる!飛ばせる!なんて事はないし、それはあまりにおちんちん的な思考だ。
おちんちん的思考者(cock-thinker)は、とにかく“フルーツ(成果) ”だけを求める。生産ー収穫といっためんどくさいプロセスは後回し※だ。
彼らは、目の前にボインと垂れ下がっているフルーツ──たわわなふたつのおっぱいを"即座"に求めてしまう。
(✔️jargon:おちんちん的思考者[cock-thinker]──プロセスよりも即座のフルーツ(結果)を求めてしまう存在のこと。)
[※]男たちはめんどくさいプロセスは後回しにしようとする。一体なぜ、そうなっているのだろう?
:それは、オトコとオンナの性戦略の食い違い(生物学用語: sexual conflict)から説明できる。
───オトコがもし、セックス(フルーツ)を実現させるための過程(=手続き、プロセス)としての"恋愛"・・・ロマンスの種まきや、その育成と収穫といったヒジョーにめんどくさいけれども、セックスしてから振り返ってみればなんだかんだ楽しくて思い出深いあれこれ・・・にそれ単体として(=性的な要素が伴わなくても)熱中できるような性向を持っていたとすると、いったいどうなるだろう?
・・・きっとそのようなオスはメスの性戦略に「嵌められ」てしまい、遺伝子が残せる割合が低下する、つまり進化生物学的にいえば「適応度/fitness」の低下により、世代を経るうちにそういうタイプのオスはゆっくりと淘汰されてしまうのだ。
──その一方で女にとっちゃ、セックス(精子による卵の受精)をまるで要求せず、金を稼いで家事の手伝いをし、育児に惜しみない投資をしてくれるオスは、その男の精子を受精するのがけっして好みじゃなくたって、ぜんぜん大好物というわけだ。もちろんこれは精子を受精したいオスに対する「好き」とは神経科学的にタイプの異なるものではある。
(男の本能は、相手がどんな卵子保持個体であれセックスする以上はその生殖戦略に則り孕ませたいと思っている。その子を養いたいかどうかが男の「好き」の分水嶺かもしれない。──それに照らして、オンナの性戦略は何とも複雑だ:どうでもいい男のものを孕んでしまったら困る。受精用に選ぶ精子は、彼女が生殖戦略を遂行する上でとりわけ優れた一匹を選びたい。魅力的な男から、生涯養う「たった1人」に選ばれるのは難しいかもしれないが、彼の精子をたんに入手することは彼のバラマキ本能ともwin-winであり、比較的簡単である。問題はその後の育児についてだが──)
──ぜひとも!私のパパ(夫)になってください。でもセックスはあんまり好きじゃないから控えてね。好きよ、いっぱい愛してね♡ *
*これをはっきりと体現するのがキャバ嬢だ。
こういった振る舞いは一夫一妻を築く鳥類などでも多く (ほとんどの種においてかなり頻繁に) 確認されている。このような心の仕組み/メカニズムが存在しているのは、その性戦略が進化において淘汰をたしかに勝ち抜いてきたからに他ならない。
(進化生物学の素養がなければ、俺の日本語がアレなのも相まって、少々アタマが混乱したかもしれないね。後でゆっくり説明するので、話を元に戻そう)
フルーツを即座に求める男の性的思考習性についての神経科学的説明として、ボストン大の認知科学者オギ・オーガスとサイ・ガダムは、著書『A Billion Wicked Thoughts: What the World's Largest Experiment Reveals about Human Desire/邦題:性欲の科学』のなかで、以下のような表現を与えている。
"───男性の性的欲望は、膝を叩くと足がピョンと上がる無条件反射のようなものだ。身体からの興奮のシグナルが、即刻、心理的な欲情につながるのだ。
エルマー・ファッドは、すこしでもワビット(ラビットの訛り)の気配がしたら、いつでも喜んで、カンタンに銃を構え、むやみに発射する。
・・──彼は非常に騙されやすいタイプでもあり、変装したアヒルをラビットと思い込んだり、バックス・バニーの仕掛けたワナに単純に引っかかってしまう。。。"
#1「勇者の剣」の凄さを自慢するのではなく、自らが「勇者であること」自体を示せ、匂わせろ
───すべての男にとって“オンナをうまくモノにする方法”とは、なにかの「超能力」 のメタファーをともなって脳内に妄映されうるはずだ。
それは「テクニック」や「メソッド」とも名付けられることが多く、「武器」のマインドイメージをも形成するだろう。*
*最新の認知言語学が提唱する概念メタファー論(Conceptual metaphor logic)によれば、人間の脳の「概念認知」とは根本的に、何らかのメタファーによって行われる。つまり、俺がここに書く「口説きの作法(マナー)」を“武器”だとか“超能力"だとか思いこむ奴は、根本的に理解を誤ることになる。
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~mogami/metapher94.html
jargon:✔️概念メタファー[Conceptual metaphor]概念メタファーは男の口説きにおいても強力なツールになる。たとえば「議論」という概念を「戦争」の概念メタファーで捉える者と、高め合い(アウフハーベン)の概念メタファーで捉える者とでは、説得の難易度がずいぶんと変わる。口説きも同様だ。
───ここに書くものを、読者諸兄は決して「テクニック」や「メソッド」とは捉えないでほしい。
「弱くて非モテな自分」がその「超能力」もしくは「武器」を外部から装着/装備することで、なんかめっちゃ強くなる。"イケそうな気"がしてくる・・・
───こういう思考のフレームを持つと、お先は真っ暗だ。説明は省略するが、この思考は、男を正規のモテルートではなく地獄の泥沼コース:キャバ嬢のパパ的「モテ」ルートへと導いていく。
くれぐれも気をつけてほしい。同じような誘惑は社会的肩書きとか、地位とか、カネとか、学歴とか、なにかの功績とか──とにかくいろんなものを男が得るたびに生じる。
"せっかく頑張ってゲットしたんだし、この「武器」を使って、なんとかあの綺麗なオンナを落とせないだろうか?"
───もちろん、すべての男が考えることだ。すべての男がそう考え、すべての男が同じように失敗していく。
だが、それらを “武器” として装着/装備したり、ポケモンカードのように “発動” することでオンナは落ちる───そう未だに、物事を単純に考える男が、呆れるほど、ものすごく多い。
“ぼくがかんがえたさいきょーの必殺技 ”を繰り出せば、ハイ、ボロン。
(いいか、女なんてそんなもんだ。”)
──このような思考フレームを脳みそに据えてる男はモテない。
なぜか? ───そのような"装着物"の凄さをひたすらアピールする奴は、概して「中身」がショボいからだ。そしてそういう男の「中身」をこそ、オンナは本能的にじっと見つめているからだ。
───もちろん、ここで言う「中身」とは性格の良さだとか、そういうことじゃあ無い。オンナが男について本能的に、無意識で観察しているものとはSR価値、つまり男の生存&生殖価値だ。
jargon:✔️S/R価値[Survive/Replicate Value]
───オンナは男のセックスバリューを計算する上で、生存面(Survive)で役立つ要素と、生殖面(Replicate)で役立つ要素の2つを観察している。
女にとっての恋愛とは、本人がそれを意識しているかしていないかに関わらず、
「その男の遺伝子を(私は)受精したいかどうか」
というひどく生物学的な悶々だ。
セックスをしても、相手の配偶子が胎内に残留して「子ども」を宿らせるなんてことが生じ得ない男は、そんなことを思い悩むようにはできていない。
「悩むくらいなら射精したほうが良い」というのがこれまでの進化史における男にとっての適応戦略だったからだ。
──しかし、オンナはそうじゃあない。
女は、男に誘われても、ウンウン、ウジウジ悩む必要がある。そのことは有名な女性・社会心理学者ハットフィールドの研究*からも示唆されている。(Hatfield&Clark 2003)
[*大学内に魅力的な青年と、若い女の子を複数名サクラとして送り込み、男女それぞれの学生に話しかけ、和んだところで以下の3つの質問を繰り出す──1.今晩、デートしない?2.今晩、僕の(私の)アパートにこない? 3.今晩、ベッドを供にしない?その結果は以下の通り。]
(デートは女にとって「悩む」行為である)
そして、その脳内会議の結果は、女がよく交わす「アリ/ナシ」トークにおいて──若干基準は緩めなものの──悶々の末、ついに意識的に公示される。
jargon:✔️アリ/ナシトーク[mean-to-or-not chatting]
──オンナが「この男ってアリ、ナシ?」とコミュニティや友人間でよくやる会話。
他人に尋ねる場合には、周囲の意見を聞くことで男のソーシャルバリューに関する評価付けをしている。
──また、必ずしも男と離れた場所で行われるものではなく、男が2人以上の女グループにアプローチを仕掛けている最中にも、その「相談」は女同士で言葉にせずとも交わされている。その場合、男はその場で社会的価値の高い振る舞いを行うことで、ソーシャルプルーフ(社会的価値の証明)を示すことができる。
・金持ちだが、金だけをアピールする男。
・立派な肩書きを持つが、その肩書きだけをアピールする男。
・社会的地位が高いが、その地位の高さだけをアピールする男・・・。
彼らの戦略がなぜ口説きにあまり有用でないかは、ギプス効果から説明される。
jargon:✔️ギプス効果
──凄いでしょアピールや自慢が酷い男はすなわちギプスを付けているという心理的効果。骨折した奴は石膏で固められた包帯グルグル巻きのカチコチの腕を「ねぇねぇ見て、凄いでしょ」と周囲にアピールするが、それを取り外した中身は無論、貧弱だ。オンナの観察眼は、そのような「背景的な“むしろ”の脆弱さ」を、いとも簡単に見抜いてしまう。
オンナは、男からしきりに“看板”だけをアピールされても、
本能的に、中身(プライマリーなセックスバリュー)はどうなの?、と思ってしまう。
それは太古の昔から受け継がれてきた、適切な配偶相手を選ぶための戦略的思考だ。
「外から取り付けた何か」をしきりにアピールされると──衝撃的なことだが──、
オンナの脳内では、その付加価値(added value)ぶんが、“男の想定価値” から「引き算 (マイナス) 」される。
なぜ、オンナが"付加価値"をセックス相手を選ぶ上であまり評価しないかについては、「進化論」の基本ルールの1つ:獲得形質は遺伝しない(NIAC:no-inheritance of acquired characteristics)からもインファされるものだ。
男がオンナから「セックス相手」に選ばれるためには、SR価値 (プライマリーなセックスバリュー)をアピールすべきであって、あとから獲得したもの=付加価値 *ここではこのように表現する のアピールはあまりしない方がいい。
それは女にとって、「俺は昔はインキャで非モテだったけど、努力してモテるようになったんだ...!」というアピールに等しい。──もちろんその場合、その男とセックスして子供に引き継がれる形質は「非モテ」である。
同様に、(昔は非モテだったけど)コツコツ頑張っていまはこんなにカネ持ってますよ!(昔はクラスカーストの底辺だったけど)いまはすっかりボクもお役人ですよ!
──そういう付加価値のアピールは、L/RミクストメイティングのR側面:「ロマンス」のシーンにおいては女を萎えさせるだけのものになる。
(ただ、金アピール、肩書きアピールは、もう一方のL側面:「結婚」シーンにおいては、女を滾らせるものになる──なぜ?結婚とは育児投資の契約であり、精子提供の契約ではないからだ)。
オンナは概して、セックスする男に対しては、「“もともと”の素質・優秀さ」を求めている。
(たとえばルックスはこの1つだ──子供や子孫にモテルックスを引き継げるという、生物の繁殖戦略において特大のメリットがある──が、もちろんそれだけじゃない。)
───たしかに「落ちこぼれが奮起して社会階層を駆け上がった」というストーリーにもオンナは興奮する*が、それは彼になんらかの「もともとのスペシャルな素質」を見出しているがためだ。
* 反逆性と不服従(rebellion&disobedience)あるいは挑戦性は、オンナが男に惹かれるセクシャルキューの一つになっている。
それらは恭順さや従順さよりも圧倒的に女に性的に高く評価される(おそらく遺伝子が優秀だとみなされている ;霊長類学者のドゥ=ヴァールは、チンパンジーの群れ社会においても「クーデターを起こす」ことを考え、ボスの座を狙っているオスがメスからモテたということを記述している De Waal, 1982 )。男は大きな夢を追いかけたり、何らかの野心を抱こう。「現状のままでは終わらない」のディスプレイが、女の性的好意をグッと引き寄せる。
───これを援用して、男の「ユーモア」や「礼儀正しさ」についてのモテ/非モテ論を語ることも可能かもしれない。*
* 俺は笑いの優越理論を支持している。
───場に笑いを生み出せるオトコがモテるのは、それが女にとって、男のアルファ性を思わせるものだからだ。自分の群れ順位が優れていること(アルファ性)をアピールする上で、それは必ずしもツッコミの笑い(=イジリ)である必要はなく、ボケでもいい。そのボケにみんなが笑えば、婉曲的に笑われた対象=ツッコミ側が「真面目くん」となり、モテ競争の敗者となる。この場合、ボケは反逆者であり、体制に対して「クーデター」を起こしているのだ。
───男は、金持ちになったのは俺が優秀な形質を持ってるからだとか、努力できるという生まれながらの才能があるんだとか、そういう生得性ゆえの「ハイスペック」を女に「匂わせる*」べきだ。
(* もちろん「匂わせすぎ=露骨なアピール」は無能さや虚飾を暗示してしまう。ややこしいだろ?───でもヒトの脳みそはそうやって"裏"を読み合うことで進化してきたからしょうがないのだ。これをマキャベリ的知性仮説、あるいは社会脳仮説といって、ヒトの大脳皮質の拡大に関して、現在最も強く支持されている理論だ)
オンナが、好きな男のイメージに
「無人島でも生きていけそうな人!」
をあげるのは、まさに本能的に、男のプライマリーバリューを見ていると言っていい。無人島においては付加価値は一切意味をなさない。男はまさに裸一貫、丸腰だ。
───そして、いままさに「この男は配偶相手として相応しいか?」を勘案している彼女の、後世の子孫たちは、おおよそそのような「無人島」で暮らし、生き延びていくことになるのだ(そこには裕福なパパの仕送り、なんてもんはない。先祖からのプレゼントは遺伝子だけだ)。
オンナはまぎれもなく男の「能力」を好くのであって、モノやカネでその恋情を釣ることはできない。
(少なくともL/RミクストメイディングにおけるRomanceの側面においては。目的が精子提供=セックスでなく、結婚となるとまた別だ。※)
※重要なこと:自然界における一夫一妻の種において、つがいを築く配偶相手と、実際の父親としての精子提供相手が完全に一致する、なんてことはまずない(さっきもチョロっと説明したよね)。
ヒトの祖先もそのような状況にあったと仮定して組み立てられたロジックが、俺が提唱する「L/Rミクストメイティング」である。この仮説的理論の主軸は、「結婚したい相手」と「カレシやセックスしたい相手」の好みをオンナが進化的に別々に分けて(それぞれ独立した、2つのものとして)発達させてきたというものだ。*
* 一度、「コンドームの存在を無いもの」としてホモ・サピエンスの祖先たちの恋愛行動がどのようなものであったかについて思いを馳せてみよう。コンドームが無い=セックスすれば子供を孕む、だ。女の子が言う「結婚したい人と彼氏にしたい男のタイプは別!」の本当の生物学的な意味合いが、コンドームの存在を想定しなければ見えてくるはずだ。
jargon:✔️獲得形質は遺伝しない[NIAC:no-inheritance of acquired characteristics]
──ラマルクによって提唱された用不用説(進化は個体が強く「求める」ことの積み重ねで達成される)を完全に否定する、現代進化論の定説。
──しかし、エピジェネティクス理論など、これを一部修正しうるものも出てきている。注視が必要だ。
さて、俺がこれから書いていきたいのは(何度言うんだ?)、見方によっては、確かに「テクニック=武器」の一つなのかもしれない。でも、個人的にはけっして、そういう風には捉えてほしくない。
「武器」とか「テクニック」、「超能力」...そんなイメージは捨ててほしい。
口説きとは、
スポーツだ。
──そして、それはプラクティス(practice, 実践) によってマスタリー (mastery, 熟達) がなされるものだ。
──"小手先のテクニック"だけでうんぬん〜みたいなものでは決してない。
口説きとはむしろ、筋トレや格闘技に似ている。男としての鍛錬性や度量が、結果にダイレクトに反映される。
──これから書くのはあくまで、
生物学的に決まった(自然な)ステップで求愛ダンスを踊れ という話に過ぎない。
鳥類のオスは「男としての魅力と器」を示すために、モノにしたいメスの前で、小さい頃からの練習によって “マスタリー” した完璧な求愛ダンスを踊る。
これは果たして「恋愛テクニック」なのだろうか? ──否、だ。それはビヘイビア(振る舞い) に過ぎない。オスは何をアピールしたのか?:自分の価値と魅力だ。
じゃあ、メスはオスの価値と魅力をどんな物差しをもって測るのか?
──“ドキドキするか、否か”だ。
オスがどれだけ求愛ダンスの練習を密かに積んでいようと、それを褒めて褒めて〜とひけらかさないかぎり(そうなれば獲得形質の思案が働いて逆効果)、メスにとっての選択基準は「ドキドキ」するか、否か =私はいま、恋してるか、否か だ。
──これはヒトも同じ。
オンナは男を判定する上で、まさに “ドキドキ具合” を図っている。
女が惚れるのは男のスペックだとか、ルックスだとか、カネや肩書きだとか、そういうんじゃない。“口説き” は決してポケモンカードバトルじゃないからだ。
それらももちろん、確かに、男の価値を見定める上での一つの要素として──神経生理学的にいえばECS(Emotionally Competent Stimulus:情動を誘発しうる刺激)の一つとして──アタマに入れられたうえで、
彼女のその男に対する判断は、「いまアタマに入ったこの信号群が、ワタシの"ドキドキ"を誘発するか、どうか?」という身体的な判定基準に、ただ、委ねられる。*
ちなみに、さっきから俺が「ドキドキ」と表現しているものは、神経科学的にいえば “ロマンティック・エモーション(恋愛情動) ”のことだ。
──ここで注意。コイツ は「感情」ではない。
#2「エモーション/情動」と「フィーリング/感情」はまったく別のもの
──たしかに、伝統的な心理学では「情動(emotion)」と「感情(feeling)」の明確な区別は付けられていない。
しかし神経生物学や、進化生物学、進化心理学の見地からは、その2つは明らかに"別"のものとして扱われる。
なぜだろう?── “感情を持たない動物”についての考慮があるからだ。
(これはひどく当たり前の話・・・伝統的な心理学は対象を「ヒト」のみに絞っているため、雑なところが多く見られる。。。)
たとえば、魚類は感情システムを持たない。お魚さんには「自我」も「感情」もない。生物学的な話、魚類はプログラム通りに駆動するマシーンでしかない。
お魚さんの身体を動かしているのは快-不快の電気信号だが、それはお魚さんが「気持ちいい」「不快だ」と感じる、という意味ではない。
俺たちは太陽が眩しいとおもわず目を背けるが、その瞬間に「気持ちいい」「不快だ」の思考は為されていないはずだ(もしなにか感じたとしたら、それは「太陽光は快?不快?」と後から「意識」によって“検証”がなされた結果だ)。
──魚類にとっては、すべての「刺激」が、あるいは「生」のすべてが、そういうものだ。痛覚はあるが、それは"痛みを感じる"という意味ではない。
サカナは活きたまま包丁を入れられても、痛みとしての痛みは感じない("違和感" はあるだろう)。
(感情=Feelがあれば、こんな状態はとても耐えられなかった筈。まだよかった、のだろうか?)
──しかし、それでも魚類は情動(emotion) システムを有している。
つまり、感情 (feeling) と情動(emotion) は、明確に異なった別のものだ。
“ エモーション(情動)と、フィーリング(感情)は、まったく異なるもの。”
──このことを現在、特に理論立てて唱えているのが、南カリフォルニア大で教鞭をとるポルトガル人神経科学者アントニオ=ダマシオだ。現代神経科学の世界第一人者である。
彼の「ソマティックマーカー理論/somatic marker theory」*は驚くべき説明をもって───ある程度、口説きの経験がある男であれば、むしろ「腑に落ちる」ような説明をもって──
“ オンナの「好き」の発動プロセスのややこしさ ”
───というものを科学的に解明する。* A.Damasio, 1994/2005
・・・俺がまた、こんなめんどくさいハナシを「女とセックスしたい」というチャラけた下心を悶々と抱えた諸兄にマジで紹介しようと思うのは(cock-thinkerなら到底耐えられないだろう!)、この理論の理解こそが、オンナの「好き」プロセスの理解に直結するからだ。
- 情動(emotion) とは、感情(feeling) とはなにか?──それらのコンテンツ(“中身”)とはいったい何か?
- オンナのEmotion階層 と、Feeling階層 とは何か?──それはリアルに、映画「インセプション」的な話になるだろう。
──ここで"口説きの成功条件"を提示しておこう:
- 「恋のドキドキ」emotionと
- 「好き」のfeeling を、
ふたつとも、オンナの脳みそに揃えること
である(7個もあるドラゴンボールと比較すればずいぶんカンタンだな)。
──これらが揃えば、男の口説きはひとまず成功といえる。
後は、冷まさないようにアツアツのままでベッドインしちゃってほしい(もちろん、“二人きりになれる場所” の確保にイロイロ手間取って、ヒエビエしちゃうこともある──そんなん、知らんわ)。
・・とりあえず、疲れたので、脳を休ませるためにミュージックスタートだ。
(──これを見て踊りだしたくなったら、君のミラーニューロンは反応している。このシステムも、口説きには用いる;ちなみにこの曲のタイトルは “ Can't stop the feeling ” だが、前述のように情動/感情には、二種類のプロセスが存在する。ミラーニューロンによってはじめに「他人に伝染する」ものは、果たしてfeelingなのか、emotionなのか?──考えてみてほしい。)
* アタマに入ったECS(Emotionally Competent Stimulus:情動を誘発しうる刺激)の続きのプロセスは?
(*次回以降、後述するが)
──アタマに入るECSの情報は、まず感覚連合野にて電気信号(ECSシグナル)に変換される。
そうして脳の深部にある爬虫類脳に向けて “送信” がなされるわけだ(爬虫類脳はコトバを喋れないから“変換”しないといけない!)。
そのECSシグナルはひとまず脳の情動誘発部位(恋心の場合は扁桃体)に到達する。
───そこでこの情動誘発部位(扁桃体)は「このオスどうなの?」を予め保持された「鍵穴」の形と照合して確かめる。
ECSシグナル=カギがいずれかの「鍵穴」と一致すれば、それは “UNLOCK” され、“合致” のシグナル=情動誘発信号が、脳の情動実行部位(脳幹・視床下部・前脳基底)に向けて送信される。
───この段階でようやく、情動システムの実行が"ON"になる。
この場合は「ロマンティック・エモーションを実行せよ」の命令だ。
脳の腹側被害野(VTA)から、ドーパミンが側坐核に向けてニュルッと放出されることで、"恋"の情動(emotion)が、生命体の身体中に掻き立てられる。
( ※ 俺たちは、これを “操作的” に引き起こそう、というわけだ!!)
───しかし、これはあくまで、エモーション(=ドキドキ) の発動プロセスに過ぎない。
それとはべつに、フィーリング/感情 というものがいかにして脳内に生成されるかは、また詳しく述べることにする。
( なぜ、エモーション/情動だけでなく、フィーリング/感情が口説きに重要なのだろう?:ヒトの女の脳には、ドキドキの情動が発生したにも関わらずそれを「却下」して意識下に浮上させないようなシステムが備わっているからだ Chivers et al. 2004 )
─── Ⅱ に続く。