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俺とオマエのFIGHT CLUB

「タテマエ」は、ホモ・サピエンスが「うまく生きる」ために身につけた、生物進化の適応物だ

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ホモ・サピエンスは「タテマエ」で社会を成り立たせる。

 

──進化心理学者によれば、ホモ・サピエンスの脳は生物進化の結果として生じた適応物 (Adaptation)である。また、そこに立ち上がるココロ・意識・思考といったものも自然選択(自然淘汰&性淘汰)の影響を強く受けている。

 

ヒトには二重性が存在する。

 

ウソとタテマエ。

 

これらもまた、自然選択(ナチュラルてセレクション)の結果として、ヒトのアタマに備わったものだろう。

 

ところで、ここではその2つをその性質によって便宜的に分けておきたい。

「ウソ」は他人を騙して利益を得るという生殖競争のための武器「タテマエ」はあえて他人を騙すことで社会を円滑に成り立たせるもの、というふうに。

 

 

オキシトシンソサエティ

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──ポール・J・ザック著『経済は「競争」では繁栄しない』でも語られたように、ホモ・サピエンスの社会はオキシトシンソサエティ(信頼社会)だ。

 

愛と信頼のホルモン・オキシトシンは「返報性の原理」を持つ。進化の結果、そのホルモンがヒト同士の間に満たされるようになったことで、人間社会に「モラル」が生まれる礎が築かれる。

 

──そして、そのオキシトシン社会を破壊する(ハックする)のがウソであり、オキシトシン社会に亀裂を入れることなく、円滑に機能させるものがタテマエだろう。

 

もっとも、"信頼=オキシトシン"が干上がってしまっている霊長類社会とは?

──おそらくヒヒのそれだろう。ヒヒ社会では、オス同士の生殖競争がめちゃくちゃ激しい。ハーレム制度であるために、多数のオスはセックスにありつくことが出来ず、いつも絶えずしのぎを削り、威嚇を交わし合う。

メスを巡る対立があまりに激しく、あまりに容赦がないために、常にオス達は互いに懐疑的になっていて、どのオス個体も友達づきあいが皆無だという。

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「タテマエ」とヒューマン・ソサエティ

 

「ウソ」はヒト社会の「信頼性」を逆手に取ったものだ。『サピエンス全史』でも語られたように、ホモ・サピエンスは“虚構”を信じるように進化してきた。

 

それゆえ「他人に嘘を信じさせること」がカンタンになった。(実際に「みたもの」しか信じない動物たちの社会において、それは使えない)

 

「ウソ」は生殖競争の武器になる。それが使われる時、そこには“自分に優位なゲームをしよう”という目的意識があり、本人はそれを自覚している──「俺はいまウソをついている」と。

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一方、「タテマエ」はどうだろうか。

 

もちろん意識的に用いられることもあるが、ほとんど無意識に発せられているということも多い。俺たちは「いま、タテマエを言おう」と思ってそれを繰り出すということは、実際それほどない。

 

「タテマエ」とは、ある局面を上手く乗り切るためにゴニョゴニョと誤魔化す、社会的な弁だ。「ウソ」ほどチャレンジングなものではない。

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──たとえば、上司に勤務態度を指摘され、「明日から勤務開始の30分前には職場に着いて始業準備しとけ」みたいなメンドくせぇことを言われたとする。

 

この時ホンネ

 

「イヤだわ、30分も早く起きるなんて辛すぎる。現状でも辛いのになに言い出すのコイツ死ねよ」

 

だったとしても、

 

普通の社会人はタテマエ(=社会性)において

 

「わかりました、頑張ります」*

 

と発話する。

 

*頑張る、努める、努力するというワードに人間社会のタテマエ性は強く表れている。

──もし、ヒト・コミュニケーションが<やります/やりたくない>のキッパリした二択で返答せざるを得ないシステムで構築されていた場合、それは野生動物の闘争社会と同じ「従うか、死ぬか(Obey Or Die」) ルールが人間社会にも適用されるということになる。そうなれば、かつてホッブズが『リヴァイアサン』の中で唱えた“万人の万人に対する闘争(the war of all against all)” が現代のヒト社会においても巻き起こることだろう。

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「わかりました、頑張ります」

 

このタテマエ発言は、上司(他のヒト個体)の怒りに対し、

チンパンジー達がボスに対してやるように、服従姿勢”を一時的に示すことでその感情システムの作動をOFFにする、という効能をもっている。

 

「わかりました、頑張ります」は社会的な動物種・ホモ・サピエンスとしての「怒り・対処マニュアル」*に沿った無意識による適切な行動であるわけだ。

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*実際に、ヒトの感情システムは個体が生存・生殖をうまくこなしていくために進化の過程で備えもったプログラムなので、生物学的に然るべき対応(OFFスイッチ)をすればおさまる、という機械的な仕組みになっている。

 

 

あるヒト個体が「やれ」と要求/命令する。それを受けて、あるヒト個体は不利益を感じ、拒絶を返すかもしれない。

ただでさえ朝はしんどいのにあと30分早く出勤するなんて無理。死ねよ

 

──動物社会はつねに生殖競争だ。ヒト社会だって、その例外ではない。自分が多大な不利益を被るような他個体の要求は、突っぱねなくてはならない。(しかしそうすると→「よろしい、ならば戦争だ」

 

 

ヒト個体どうしの緊張が高まった際、有用なのがタテマエだ。

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相手の意向と自分の意向が食い違った際、

一方が意に反することを吐く:「わかりました、頑張ります」

 

──意に介さないとしても「嫌だよ」とは言わない。タテマエで形式上の「イエス」を送る。憤っている相手ヒト個体の要求/命令をとりあえず受け容れ、みかけの従属心を示す。

 

「怒り」は生物個体が生殖地位を脅かされたり、争ったりするシーンにおいてONになる感情システムだから、

「あなたの方が上ですよ」と相手が認め、その意気の消沈を確認することで、“フーーッ” とスイッチOFFになるようにできている。

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タテマエは、ヒト個体同士の意向が食い違うことによって紛争が勃発しそうになるところを、ものの見事に解消する。

 

生物である以上、それらが集まれば必然的に生存・生殖競争がそこに生じうる。

 

しかし「できるだけ競争は社会(群れ)を破壊してしまわないような形でやろうよ」という方向性の、ある種のコンセンサスが生まれることがある。──それぞまさに「社会性」というものだ。

 

タテマエは、無駄な闘争を生じさせることなく社会を円滑化する。「ここは、そういうことにしとったるわ」「ハイハイ、わかりましたよ」と、ポーズだけを取り、相手個体の感情を宥和させる。

 

  • 怒っているヒト個体がやってほしいのは地位を認めてもらうこと。
  • 泣いているヒト個体がやってほしいのは援助と共感。
  • 笑わせてきたヒト個体がやってほしいのはいっしょに笑うこと。

 

──とにかくその感情に対処する相手個体との関係性に無駄にカドを立てず、うまくその場を切り抜ける。

・・それで大方うまくいくのだ。

 

 

タテマエ。

 

ソーシャルアニマルとしてのヒトが「うまく生きる」ために備えた、生物進化の適応物だ。

 

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*チンパンジーの愛想笑い。ボスに対して「ムカつくわこいつ、死んでくれよ」とドロドロしたホンネを抱きつつ、表面上は愛想笑いを作って「見かけの服従」を示すことで、攻撃されたり生命を脅かされる危険を免れる。

 

P.S. オンナはなぜ、男よりもよく笑うんだろう?